Instagramや店舗でのプロモーションを効果的に使い、いまや一大ブランドとなったBOTANIST。
2015年の発売以来、会社の稼ぎ頭を担ってきたBOTANISTですが、2019年は前年比売上を下回り、BOTANISTブランドの限界かとも言われていました。
しかし、2020年からは再び成長曲線を描き始め、再び会社のトップブランドとしての成長率を維持しています。
今回はBOTANISTの事例を参考に、「成長の頭打ちを迎えたブランドやサービスの打開策」について考えていきたいと思います。
2015年の発売から急成長したBOTANIST(ボタニスト)
BOTANISTを販売している株式会社I-neの決算説明資料を見ると、BOTANISTの発売以降、会社の売上が大きく伸びていることがわかります。
単純計算で2015年から2016年の売上高成長率は236%。
近年需要が横ばいのヘアケア市場で、「CAGR(年平均成長率)34%」という、とんでもない数字を叩き出しています。
P&Gや花王、ユニリーバなど大手企業が寡占しているヘアケア市場に風穴を開けたBOTANISTですが、その販促戦略は、マーケティング的にも学びが多いです。
今回は少し話が逸れてしまいますが、下記の【参考】BOTANISTから学ぶマーケティング戦略で紹介しています。
消費財市場は、大手が強すぎてブランドの生存確率は数%と言われているほど。
後発ブランドのBOTANISTが、レッドオーシャンでも成功した理由は2つの販売戦略にあったと思います。
①徹底したポジショニング
後発ブランドとして、BOTANISTは3つの点でポジショニングに成功しました。
✔︎洗練されたデザインのパッケージ
✔︎1,000円~1,500円の少し高めの価格帯
✔︎圧倒的な製品価値
まず、商品棚で目立つようにあえてシンプルなパッケージにしたこと。
洗練されたミニマルなパッケージにすることで、
ローンチ初期の当時は、このようなデザインは非常に珍しく、情報量の多いEC、店頭で目に留まりやすいポジションを築いていました。
そして、700円程度のシャンブーが多いなか、あえて1,000円~1,500円の少し高めの価格帯で製品パフォーマンスを重視した点です。
結果的に良い商品だからこそ、SNSを通して口コミが広がり、ユーザーの認知度も向上しました。
②ブランドに合ったコミュニケーション
販売本部本部長の伊藤氏は、FacebookやTwitter、キュレーションメディアなど一通りのメディアに広告出稿したうえで、Instagramに注力するように決めたと述べています。
全て試したうえで、最適な手段に全投資するのはマーケティングの実践としても王道。
Instagramでは徹底したブランディングを行い、ユーザーによる自然投稿(UGC)を増やすことにも成功しています。
結果として、広告を大量出稿しなくても認知拡大が進むようになり、UGC(User Generated Contents)によってブランドを拡大した好事例だといえます。
このように、発売から3年という短い間で、BOTANISTは急拡大することに成功しています。
売上成長率の限界と思われたBOTANIST(2018年〜2020年)
2019年にはブランド売上成長率がマイナスに
順調に会社を代表するブランドとなったBOTANISTですが、2018年以降の売上高は横ばいで成長が止まってしまいます。
2019年は2018年に比べてBOTANISTの売上高がマイナス1.7%となっており、BOTANISTローンチ後初めて売上高が減少してしまった年になりました。
下記【参考】プロダクトライフサイクル(PLC)から見るBOTANISTで詳しく書いていますが、商品やサービスは一度売上が伸びた後、需要やマーケットの関係で売上拡大に限界を迎えてしまいます。
プロダクトライフサイクル(PLC)に基づくと、売上高の頭打ちはある程度しょうがない部分がもあります。
しかし、BOTANISTは更に効果的な施策を行い、売上高成長率の引き上げに成功しました。次章で、BOTANISTが再成長した理由についてまとめていきます。
市場やカテゴリではないという点でやや異なりますが、BOTANISTの売上高頭打ちは、プロダクトライフサイクル(PLC)によって説明できます。
プロダクトライフサイクル(PLC)は、新しい商品が市場に投入されてから、徐々に売れ始めて売上高のピークを迎えた後、次第に売れなくなって市場から撤退するまでのプロセスを表したもの。
商品やブランドが成熟期に入ると、売上が横ばいになり一定程度利益が確保できる期間になります。
マーケティングでは、取り扱っている商品やブランドが成長期にあるのか、成熟期にあるのか判断して、そのステージに合わせた最適な投資をしていく必要があります。
BOTANISTは2020年までの売上高の数字だけを見ると既に成熟期に入ったと思われますが、BOTANISTの販売担当はまだ成長の余地がある(成長期の途中である)と判断して、積極的に投資を行ったと見られます。
マーケティング戦略|売上が伸び悩むBOTANIST(ボタニスト)が再成長(2021年)
2020年まで売上成長が鈍化していたBOTANISTですが、2021年になって再び売上高を伸ばしています。
直近の2021年2Q累計売上高は、年々同期比でプラス32.3%。
売上高の頭打ちは、商品やブランドを扱っていればほとんどの人がぶつかる壁。
BOTANISTに関連する公開情報をもとに、売上成長が鈍化した商品やブランドの打開策をまとめていきます。
まず、BOTANISTに限らず、簡単に「商品ブランドの売り上げ構成要素」を分解すると下記のようになります。
各要素を引き上げる施策がブランド拡大戦略になる訳ですが、BOTANISTが実践した3つの戦略を分類してみます。
① 大幅リニューアルの実施・・・(1)新規顧客の獲得、(3)リピート購入促進
② スキンケアやアウトバス領域へ商品カテゴリ拡大・・・(1)新規顧客の獲得、(2)ライン買いユーザーの増加
③ 高価格帯ラインの商品発売・・・(2)中価格帯から高価格帯への引き上げ
各戦略が売上の各構成要素を引き上げるための施策だということがわかりますね。
では、3つの戦略を詳しく見ていきたいと思います。
成長の理由① 大幅リニューアルの実施
BOTANISTは2021年3月にリニューアルを実施。
パッケージは従来のシンプル×ミニマルをより洗練させた上、バイオマス容器を採用することでサステイナブルの要素を加えています。
さらに、5シリーズの横並び展開で自分に合ったシリーズを選ぶことができるようになりました。
近年のサステイナブル消費や、パーソナライゼーション、うまくトレンドを組み込んでいて、BOTANISTにまつわる選択肢を増やしています。
リニューアルは単純に話題になってタッチポイントを増やすだけでなく、店舗側が配荷数の増加や棚割りの改善などに踏み切りやすくなるというメリットもあると思います。
実際にBOTANISTの主力商品は、配荷店数を約15,000店から約18,000店へ大幅に拡大しています。
商品ラインナップを増やしたことで、ブランド内での買いまわりも発生して、一人当たりの購入単価が上がっている可能性も考えられます。
消費財カテゴリーでは、おなじ商品を1回しか買わない人も多いので、そういった人にはBOTANISTブランド内で何個も試してもらうことに価値がありそうです。
成長の理由② スキンケアやアウトバス領域へ商品カテゴリ拡大
さらに、ボディケアやアウトバス領域に商品カテゴリを拡大。
ヘアオイルやボデイミルクなどの新商品を発売することで、配荷店数の拡大に成功しています。
成功したブランドを周辺領域へ拡大することは一般的なブランド拡大戦略ですが、BOTANISTではシナジー効果の高い周辺領域のグッズを上手く開発・展開していると言えます。
特に、「ライン使い(同じブランドで化粧品や消費財を揃えること)」をするユーザーの多い日本では、ブランドの売上底上げに効果的だと考えられます。
成長の理由③ 高価格帯ラインの商品発売
2020年7月にはBOTANIST最高峰ラインである「BOTANIST PREMIUM」を発売。
オンラインショップでは、「プレミアム ボタニカルトリートメント」と「プレミアム ボタニカルシャンプー」はそれぞれ¥3,300(税込)で販売されており、スタンダードラインと比較して約2倍程度になっています。(2021年10月現在)
高価格帯ラインへのブランド拡大は、既にブランドを使っているファンユーザーの単価引き上げに効果的です。
単価が一定のままでは、「顧客数」「購入頻度」を上げるしかないなか、BOTANISTは「単価アップ」によって、同じ顧客数でも売上を2倍に上げる方向に舵を切ったということですね。
一部既存ユーザーだけでも単価が上がれば十二分に効果がある打ち手だと思います。
まとめ:ブランドの売上が鈍化して際のマーケティング拡大戦略
BOTANISTの事例から、ひとつのブランドを拡大させる方向性は大きく3つあることがわかりました。
・単価の上昇
・コア商品のアップデート(リニューアル)
・周辺カテゴリの拡大
今回はBOTANISTの事例に絞ってみてみましたが、他のブランドでもこのような方向性で成長戦略を考えているはずなので、身近なブランドで周辺カテゴリに拡大したり単価を引き上げるための工夫がされたりしていないか、探してみても良いかもしれません。
今回の記事で伝えたかったことは、商品やブランドの売上が限界に来たと感じても、まだまだ成長する可能性は十分にあるということです。
少し話は広がりますが、今後日本で人口減少が進むと、市場全体が小さくなってしまうカテゴリがほとんど。
その中で自社やクライアントのブランドを成長させていくには、成長の限界(プロダクトライフサイクルでいう成熟期)だと思い込まず、売上を構成する各要素(単価・顧客数・リピート数)を引き上げる施策はないか考えることが重要だと思います。
売上が急激に落ち始めたタイミングで次の打ち手を考え出しても、投資リソースに制限があったり、リードタイムに余裕が持てないという問題が発生してしまうので、今回紹介した打開策は早め早めに売っておくのがオススメです。
また、今回BOTANISTのブランド拡大戦略で挙げたリニューアルや新ラインの拡大は、何度もできる訳ではなくこの成長率が続くとは限りません。
グローバル展開や新たなブランドの開発にも注力していく必要があります。
BOTANISTを運営する株式会社I-neは、BOTANISTの他にもSALONIAというドライヤーブランドの確立に成功しており、事業のポートフォリオも整理されてきました。
また、中国を中心としたグローバル展開は軌道に乗せられていないものの、日本以外のマーケットから顧客を集めてくることにも注力しています。
今後BOTANISTがグローバルブランドとして成長していくか、引き続きウォッチしていきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
SNSでシェアいただけるととても嬉しいです!
コメント